ReplicaSet
ReplicaSetの目的は、どのような時でも安定したレプリカPodのセットを維持することです。これは、理想的なレプリカ数のPodが利用可能であることを保証するものとして使用されます。
- ReplicaSetがどのように動くか
- ReplicaSetを使うとき
- ReplicaSetの使用例
- テンプレートなしのPodの所有
- ReplicaSetのマニフェストを記述する。
- ReplicaSetを利用する
- ReplicaSetの代替案
ReplicaSetがどのように動くか
ReplicaSetは、ReplicaSetが対象とするPodをどう特定するかを示すためのセレクターや、稼働させたいPodのレプリカ数、Podテンプレート(理想のレプリカ数の条件を満たすために作成される新しいPodのデータを指定するために用意されるもの)といったフィールドとともに定義されます。ReplicaSetは、指定された理想のレプリカ数にするためにPodの作成と削除を行うことにより、その目的を達成します。ReplicaSetが新しいPodを作成するとき、ReplicaSetはそのPodテンプレートを使用します。
ReplicaSetがそのPod群と連携するためのリンクは、Podのmetadata.ownerReferencesというフィールド(現在のオブジェクトが所有されているリソースを指定する)を介して作成されます。ReplicaSetによって所持された全てのPodは、それらのownerReferences
フィールドにReplicaSetを特定する情報を保持します。このリンクを通じて、ReplicaSetは管理しているPodの状態を把握したり、その後の実行計画を立てます。
ReplicaSetは、そのセレクターを使用することにより、所有するための新しいPodを特定します。もしownerReference
フィールドの値を持たないPodか、ownerReference
フィールドの値がコントローラーでないPodで、そのPodがReplicaSetのセレクターとマッチした場合に、そのPodは即座にそのReplicaSetによって所有されます。
ReplicaSetを使うとき
ReplicaSetはどんな時でも指定された数のPodのレプリカが稼働することを保証します。しかし、DeploymentはReplicaSetを管理する、より上位レベルの概念で、Deploymentはその他の多くの有益な機能と共に、宣言的なPodのアップデート機能を提供します。それゆえ、我々はユーザーが独自のアップデートオーケストレーションを必要としたり、アップデートを全く必要としないような場合を除いて、ReplicaSetを直接使うよりも代わりにDeploymentを使うことを推奨します。
これは、ユーザーがReplicaSetのオブジェクトを操作する必要が全く無いことを意味します。
代わりにDeploymentを使用して、spec
セクションにユーザーのアプリケーションを定義してください。
ReplicaSetの使用例
controllers/frontend.yaml
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上記のマニフェストをfrontend.yaml
ファイルに保存しKubernetesクラスターに適用すると、マニフェストに定義されたReplicaSetとそれが管理するPod群を作成します。
kubectl apply -f http://k8s.io/examples/controllers/frontend.yaml
ユーザーはデプロイされた現在のReplicaSetの情報も取得できます。
kubectl get rs
そして、ユーザーが作成したfrontendリソースについての情報も取得できます。
NAME DESIRED CURRENT READY AGE
frontend 3 3 3 6s
ユーザーはまたReplicaSetの状態も確認できます。
kubectl describe rs/frontend
その結果は以下のようになります。
Name: frontend
Namespace: default
Selector: tier=frontend,tier in (frontend)
Labels: app=guestbook
tier=frontend
Annotations: <none>
Replicas: 3 current / 3 desired
Pods Status: 3 Running / 0 Waiting / 0 Succeeded / 0 Failed
Pod Template:
Labels: app=guestbook
tier=frontend
Containers:
php-redis:
Image: gcr.io/google_samples/gb-frontend:v3
Port: 80/TCP
Requests:
cpu: 100m
memory: 100Mi
Environment:
GET_HOSTS_FROM: dns
Mounts: <none>
Volumes: <none>
Events:
FirstSeen LastSeen Count From SubobjectPath Type Reason Message
--------- -------- ----- ---- ------------- -------- ------ -------
1m 1m 1 {replicaset-controller } Normal SuccessfulCreate Created pod: frontend-qhloh
1m 1m 1 {replicaset-controller } Normal SuccessfulCreate Created pod: frontend-dnjpy
1m 1m 1 {replicaset-controller } Normal SuccessfulCreate Created pod: frontend-9si5l
そして最後に、ユーザーはReplicaSetによって作成されたPodもチェックできます。
kubectl get Pods
表示されるPodに関する情報は以下のようになります。
NAME READY STATUS RESTARTS AGE
frontend-9si5l 1/1 Running 0 1m
frontend-dnjpy 1/1 Running 0 1m
frontend-qhloh 1/1 Running 0 1m
ユーザーはまた、それらのPodのownerReferences
がfrontend
ReplicaSetに設定されていることも確認できます。
これを確認するためには、稼働しているPodの中のどれかのyamlファイルを取得します。
kubectl get pods frontend-9si5l -o yaml
その表示結果は、以下のようになります。そのfrontend
ReplicaSetの情報がmetadata
のownerReferences
フィールドにセットされています。
apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
creationTimestamp: 2019-01-31T17:20:41Z
generateName: frontend-
labels:
tier: frontend
name: frontend-9si5l
namespace: default
ownerReferences:
- apiVersion: extensions/v1beta1
blockOwnerDeletion: true
controller: true
kind: ReplicaSet
name: frontend
uid: 892a2330-257c-11e9-aecd-025000000001
...
テンプレートなしのPodの所有
ユーザーが問題なくベアPod(Bare Pod: ここではPodテンプレート無しのPodのこと)を作成しているとき、そのベアPodがユーザーのReplicaSetの中のいずれのセレクターともマッチしないことを確認することを強く推奨します。 この理由として、ReplicaSetは、所有対象のPodがReplicaSetのテンプレートによって指定されたPodのみに限定されていないからです(ReplicaSetは前のセクションで説明した方法によって他のPodも所有できます)。
前のセクションで取り上げたfrontend
ReplicaSetと、下記のマニフェストのPodをみてみます。
pods/pod-rs.yaml
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これらのPodはownerReferences
に何のコントローラー(もしくはオブジェクト)も指定されておらず、そしてfrontend
ReplicaSetにマッチするセレクターをもっており、これらのPodは即座にfrontend
ReplicaSetによって所有されます。
このfrontend
ReplicaSetがデプロイされ、初期のPodレプリカがレプリカ数の要求を満たすためにセットアップされた後で、ユーザーがそのPodを作成することを考えます。
kubectl apply -f http://k8s.io/examples/pods/pod-rs.yaml
新しいPodはそのReplicaSetによって所有され、そのReplicaSetのレプリカ数が、設定された理想のレプリカ数を超えた場合すぐにそれらのPodは削除されます。
下記のコマンドでPodを取得できます。
kubectl get Pods
その表示結果で、新しいPodがすでに削除済みか、削除中のステータスになっているのを確認できます。
NAME READY STATUS RESTARTS AGE
frontend-9si5l 1/1 Running 0 1m
frontend-dnjpy 1/1 Running 0 1m
frontend-qhloh 1/1 Running 0 1m
pod2 0/1 Terminating 0 4s
もしユーザーがそのPodを最初に作成する場合
kubectl apply -f http://k8s.io/examples/pods/pod-rs.yaml
そしてその後にfrontend
ReplicaSetを作成すると、
kubectl apply -f http://k8s.io/examples/controllers/frontend.yaml
ユーザーはそのReplicaSetが作成したPodを所有し、さらにもともと存在していたPodと今回新たに作成されたPodの数が、理想のレプリカ数になるまでPodを作成するのを確認できます。 ここでまたPodの状態を取得します。
kubectl get Pods
取得結果は下記のようになります。
NAME READY STATUS RESTARTS AGE
frontend-pxj4r 1/1 Running 0 5s
pod1 1/1 Running 0 13s
pod2 1/1 Running 0 13s
この方法で、ReplicaSetはテンプレートで指定されたもの以外のPodを所有することができます。
ReplicaSetのマニフェストを記述する。
他の全てのKubernetes APIオブジェクトのように、ReplicaSetはapiVersion
、kind
とmetadata
フィールドを必要とします。
ReplicaSetでは、kind
フィールドの値はReplicaSet
です。
Kubernetes1.9において、ReplicaSetはapps/v1
というAPIバージョンが現在のバージョンで、デフォルトで有効です。apps/v1beta2
というAPIバージョンは廃止されています。先ほど作成したfrontend.yaml
ファイルの最初の行を参考にしてください。
また、ReplicaSetは.spec
セクションも必須です。
Pod テンプレート
.spec.template
はラベルを持つことが必要なPod テンプレート です。先ほど作成したfrontend.yaml
の例では、tier: frontend
というラベルを1つ持っています。
他のコントローラーがこのPodを所有しようとしないためにも、他のコントローラーのセレクターでラベルを上書きしないように注意してください。
テンプレートの再起動ポリシーのためのフィールドである.spec.template.spec.restartPolicy
はAlways
のみ許可されていて、そしてそれがデフォルト値です。
Pod セレクター
.spec.selector
フィールドはラベルセレクターです。
先ほど議論したように、ReplicaSetが所有するPodを指定するためにそのラベルが使用されます。
先ほどのfrontend.yaml
の例では、そのセレクターは下記のようになっていました
matchLabels:
tier: frontend
そのReplicaSetにおいて、.spec.template.metadata.labels
フィールドの値はspec.selector
と一致しなくてはならず、一致しない場合はAPIによって拒否されます。
備考: 2つのReplicaSetが同じ.spec.selector
の値を設定しているが、それぞれ異なる.spec.template.metadata.labels
と.spec.template.spec
フィールドの値を持っていたとき、それぞれのReplicaSetはもう一方のReplicaSetによって作成されたPodを無視します。
レプリカ数について
ユーザーは.spec.replicas
フィールドの値を設定することにより、いくつのPodを同時に稼働させるか指定できます。そのときReplicaSetはレプリカ数がこの値に達するまでPodを作成、または削除します。
もしユーザーが.spec.replicas
を指定しない場合、デフォルト値として1がセットされます。
ReplicaSetを利用する
ReplicaSetとPodの削除
ReplicaSetとそれが所有する全てのPod削除したいときは、kubectl delete
コマンドを使ってください。
ガーベージコレクターがデフォルトで自動的に全ての依存するPodを削除します。
REST APIもしくはclient-go
ライブラリーを使用するとき、ユーザーは-d
オプションでpropagationPolicy
をBackground
かForeground
と指定しなくてはなりません。
例えば下記のように実行します。
kubectl proxy --port=8080
curl -X DELETE 'localhost:8080/apis/extensions/v1beta1/namespaces/default/replicasets/frontend' \
> -d '{"kind":"DeleteOptions","apiVersion":"v1","propagationPolicy":"Foreground"}' \
> -H "Content-Type: application/json"
ReplicaSetのみを削除する
ユーザーはkubectl delete
コマンドで--cascade=false
オプションを付けることにより、所有するPodに影響を与えることなくReplicaSetを削除できます。
REST APIもしくはclient-go
ライブラリーを使用するとき、ユーザーは-d
オプションでpropagationPolicy
をOrphan
と指定しなくてはなりません。
kubectl proxy --port=8080
curl -X DELETE 'localhost:8080/apis/extensions/v1beta1/namespaces/default/replicasets/frontend' \
> -d '{"kind":"DeleteOptions","apiVersion":"v1","propagationPolicy":"Orphan"}' \
> -H "Content-Type: application/json"
一度元のReplicaSetが削除されると、ユーザーは新しいものに置き換えるため新しいReplicaSetを作ることができます。新旧のReplicaSetの.spec.selector
の値が同じである間、新しいReplicaSetは古いReplicaSetで稼働していたPodを取り入れます。
しかし、存在するPodが新しく異なるPodテンプレートとマッチさせようとするとき、この仕組みは機能しません。
ユーザーのコントロール下において新しいspecのPodをアップデートしたい場合は、ローリングアップデートを使用してください。
PodをReplicaSetから分離させる
ユーザーはPodのラベルを変更することにより、ReplicaSetからそのPodを削除できます。この手法はデバッグや、データ修復などのためにサービスからPodを削除したいときに使用できます。 この方法で削除されたPodは自動的に新しいものに置き換えられます。(レプリカ数は変更されないものと仮定します。)
ReplicaSetのスケーリング
ReplicaSetは、ただ.spec.replicas
フィールドを更新することによって簡単にスケールアップまたはスケールダウンできます。ReplicaSetコントローラーは、ラベルセレクターにマッチするような指定した数のPodが利用可能であり、操作可能であることを保証します。
HorizontalPodAutoscaler(HPA)のターゲットとしてのReplicaSet
ReplicaSetはまた、Horizontal Pod Autoscalers (HPA)のターゲットにもなることができます。 これはつまりReplicaSetがHPAによってオートスケールされうることを意味します。 ここではHPAが、前の例で作成したReplicaSetをターゲットにする例を示します。
controllers/hpa-rs.yaml
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このマニフェストをhpa-rs.yaml
に保存し、Kubernetesクラスターに適用すると、レプリケートされたPodのCPU使用量にもとづいてターゲットのReplicaSetをオートスケールするHPAを作成します。
kubectl apply -f https://k8s.io/examples/controllers/hpa-rs.yaml
同様のことを行うための代替案として、kubectl autoscale
コマンドも使用できます。(こちらの方がより簡単です。)
kubectl autoscale rs frontend --max=10
ReplicaSetの代替案
Deployment (推奨)
Deployment
はReplicaSetを所有することのできるオブジェクトで、宣言的なサーバサイドのローリングアップデートを介してReplicaSetとPodをアップデートできます。
ReplicaSetは単独で使用可能ですが、現在では、ReplicaSetは主にPodの作成、削除とアップデートを司るためのメカニズムとしてDeploymentによって使用されています。ユーザーがDeploymentを使用するとき、Deploymentによって作成されるReplicaSetの管理について心配する必要はありません。DeploymentはReplicaSetを所有し、管理します。
このため、もしユーザーがReplicaSetを必要とするとき、Deploymentの使用を推奨します。
ベアPod(Bare Pods)
ユーザーがPodを直接作成するケースとは異なり、ReplicaSetはNodeの故障やカーネルのアップグレードといった破壊的なNodeのメンテナンスなど、どのような理由に限らず削除または停止されたPodを置き換えます。 このため、我々はもしユーザーのアプリケーションが単一のPodのみ必要とする場合でもReplicaSetを使用することを推奨します。プロセスのスーパーバイザーについても同様に考えると、それは単一Node上での独立したプロセスの代わりに複数のNodeにまたがった複数のPodを監視します。 ReplicaSetは、Node上のいくつかのエージェント(例えば、KubeletやDocker)に対して、ローカルのコンテナ再起動を移譲します。
Job
PodをPodそれ自身で停止させたいような場合(例えば、バッチ用のジョブなど)は、ReplicaSetの代わりにJob
を使用してください。
DaemonSet
マシンの監視やロギングなど、マシンレベルの機能を提供したい場合は、ReplicaSetの代わりにDaemonSet
を使用してください。
これらのPodはマシン自体のライフタイムに紐づいています: そのPodは他のPodが起動する前に、そのマシン上で稼働される必要があり、マシンが再起動またはシャットダウンされるときには、安全に停止されます。
ReplicationController
ReplicaSetはReplicationControllersの後継となるものです。
この2つは、ReplicationControllerがラベルについてのユーザーガイドに書かれているように、集合ベース(set-based)のセレクター要求をサポートしていないことを除いては、同じ目的を果たし、同じようにふるまいます。
このように、ReplicaSetはReplicationControllerよりも好まれます。
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